自治体は資産運用できないの?
右肩下がりの日本においては、適切に資産運用を行うことが重要になります。個人単位では割かし活況ですが、自治体などではどうでしょうか?という話です。
結論:できます。自治体の方針次第。
基本事項として
何かしらの「運用」となった場合、目的に合わせた「基金」という容れ物を作って、そこに積立して管理運用されることになります。
一般的な基金の種類↓
- 財政調整基金 … 年度間の財源調整や大規模災害などの不測の事態が発生した際に活用するために積み立てておく
- 減債基金 … 地方債の償還に充てるために積み立てておく
- 特定目的基金 … 公共施設の修繕や建て替えとか、農業振興、防災対策、ふるさと創生といったような、特定の目的のために資金を積み立て、条例で定めた使途に限って取り崩すことができる
基金の運用方針について
基金全体もしくは個別の基金の運用方針は、自治体の方針によってきめられています。この方針には、「地方自治法」「地方財政法」「過去からの慣例」などが絡んでくると思われます。
地方自治法
(歳計現金の保管)
第百六十八条の六 会計管理者は、歳計現金を指定金融機関その他の確実な金融機関への預金その他の最も確実かつ有利な方法によつて保管しなければならない。
(基金)
第二百四十一条
普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、特定の目的のために財産を維持し、資金を積み立て、又は定額の資金を運用するための基金を設けることができる
2 基金は、これを前項の条例で定める特定の目的に応じ、及び確実かつ効率的に運用しなければならない。
地方財政法
(地方公共団体における年度間の財源の調整)
第四条の三
3 積立金は、銀行その他の金融機関への預金、国債証券、地方債証券、政府保証債券(その元本の償還及び利息の支払について政府が保証する債券をいう。)その他の証券の買入れ等の確実な方法により運用しなければならない。
基金は株式運用しないのか
運用といえば株式がメジャーです。基金の運用に当たっては、明確に「株式運用はダメ」とはありません。ポイントは「確実」という文言ではないかと考えられます。
「確実」の意味
超大雑把にいうと「減らすな」と解釈されています。価格変動が激しい株式での運用はふさわしくないと解されます。 また、長期の運用においては、資金が必要になり途中で資金を引き出す場合、手数料その他で元本が減ってしまう可能性があります。
加えて、地方自治法168条の6(歳計現金の保管)を基金の資金に関しても類推適用しているため「指定金融機関その他確実な金融機関への預金その他確実かつ有利な方法によって保管しなければならない」ことから、必然、預金もしくは定期預金での運用ウェイトが高くなりがちではないかと考えられます。
効率的に運用
地方自治法(基金)の項では、「…確実かつ効率的に運用しなければならない。」とあります。
- 「確実」→減らさな運用=預金・定期預金(上の項より)
- 「効率的」→預金定期預金より増やす。ただし「確実」に=信用のある債券で運用
ということになり、実質、預金・定期預金・国債・地方債がメインの運用になってしまいます。
過去からの慣例など
「今までもそうだったから」は多分にあるでしょう。過去の決定を覆すだけの要素も、残念ながら乏しいと思います。
例えば金融に詳しい人材がいない、など。仮に、詳しい人がいたとしても、一人だけではダメでしょう。首長の方針や財政部門の理解、毎年報告義務があるので、議会(議員)の理解も必要になってくるはずです。(「株」と聞いただけで「ダメ」とする人も絶対いるでしょう。)
運用の基本は「しばらく使う予定のない資金で運用しましょう」
- 普段使うお金
- 用途や利用時期が決まっているお金 ←ココ
- しばらく使う予定のないお金
基金の運用は「ココ」というイメージが合うのではないかと思います。基金は、法令で使用目的を決めたうえで創設されます。用途が決まっているということです。加えて、必要な時に「確実」に利用できなければならないし、そのときに元本が大幅に減っていては困ります。
まとめ的なこと
法令とその解釈、人材、国などの制度、議会(議員)の説き伏せなど、相当なエネルギーが必要になります。そこまでかける価値があるのか?自治体の運営において優先順位はどこなのか?すべては自治体の姿勢次第ということです。